トップページに戻る


手のひらと雨粒

写真

手のひらがぼろぼろになった。
このまま崩れてしまうかもしれないぐらい手が荒れた。
毎日キーボードを叩いているだけの生活なのにどうしてこんなになってしまったのだろう。
指先は皮が剥けすぎて堅く、老人の手のように皺が寄り、堅くなっている。
社会でやってけるほどの実力もない。
我慢できるほどの根気もない。
金を稼いでも、使い道がわからない。
本当にやりたいこともない。
才能もないし、努力もしない。
全てを忘れた若者たちのようにはしゃぎ回る気力もない。
何もない。
何もない。
仕事をさぼって、脅えて、煙草を吸って、緩やかな自殺を続けるだけだ。
本当に空から全ての人類を滅ぼしてくれる何かが降りてきてくれればいいのに。
死ぬ気で逃げ回ったり、
死ぬ気で戦ってみたり、
死ぬ気で人を好きになってみたりしたい。
二十三になっても、一度も人を好きになったこともない。
ツマラナイ人生だ。
手のひらだけぼろぼろにして、老人になって「僕の人生は割とよかった」なんて言いたくない。
前のめりになって死にたいけど、前のめりにも空を見上げて倒れることもないだろう。
糞とションベンに塗れて、独りぼっちで死んでゆくだけだろう。
この手のひらを見ればわかる。
傷の舐め合でも、騙し合でも、何でもいい。
人に合わせて、何もかも忘れられたら。
雨の降ったアスファルトに反射する線香花火のような輝きと、光の輪を見ていたら車に轢かれた。
雨の一粒がはっきり見えた。
後頭部を何か堅いものにぶつけて、目の前が電気の消えた僕の部屋のように暗く寂しく光を奪った。
さようなら。
最後に見たものが空から落ちてきた雨でよかった。
僕も地上に降りてきて、泥水に塗れて、そして空に帰っていけたらいい。
何もないただの雨粒になって、この大地にしみ込むんだ。
僕が死んでも誰の記憶にも残らない。
この手のひらと同じだ。


トップページに戻る