幻覚の夜明け
これまでのあらすじ
やはりこの世に飽き果てている「彼」が加わり、そしてそれに否応なく巻き込まれる同居人「もう一人」。
一九九八年十二月三十一日の深夜、一つの区切りをつけようとCubensisを喰らった四人組がいた。
暗中模索の人生に救いはない。
そんなことは分かってる。
登場人物
俺:言わずと知れた駄目人間。楽なほうにしか転がらない人生は本人も結構気に入っている、というよりもう駄目だ。
奴:最近は暗黒の力を身に付けようと切磋琢磨している。早く超悪い人間になってくれないかと密かに期待する。
もう一人:相も変らず良く分からない男。どうやら不幸の星の下に生まれてきたようだ。人間になりたいらしい。
彼:まさか薬が好だなんて知らなかった長髪のロックンローラー?依然謎に包まれる人物。ロータスノーツを操るネットワークエンジニア。二十四歳ぐらいか?
1.新しい始まり
今思いだしても余りよく覚えていない。
2回目の後1日開けて、連続で二回やったせいか、記憶がしっかりしていない。
こんな脳味噌溶けちまえ。
前回と同じくCubensisiを入手し、一九九九年十二月三十一日の午後二時、俺と奴は眠りから覚めるとCubensisを眺めてうっとりとしていた。
不気味な干からびた笠、非常に不味そうだ。
今回は新しい仲魔、彼が加わる。
彼は二十四歳ぐらい俺の会社の知り合いだ。
どういう分類の俺関係なのかは未だ良く分からないが、この世に飽き果てている仲魔なのだけは確かだろう。
俺と奴がCubensisに手を出している頃、彼は他の様々なモノに手を出したが、効果は余り芳しくないようで今回の祭りに新しく加わった。
しかし、三時過ぎになっても彼からは連絡が無い。
電話をしてみると今起きたらしい。
何処も同じようなものか。
取り敢えず六時頃につくように計画して無事到着。
もう一人はまだ仕事だ。
だが誰ももう待ってはいられない。
三人揃えば我慢の限界だ。
いや、限界なんて無い。
始めっから自制心はゼロだからだ。
自制心と良識、そして普通にこの世で暮らしていけるほどの精神があったらCubensisなんて食おうとしない。
ありがとう神様、こんなカタルシス。
xxxの例のところで四袋、約10gほど今回はCubensisを入手しておいた。
彼に5g俺に5g、そして奴は前回の残りが5g。
いい塩梅だ。
だらだらと3人組はコンビニに行って、思い思いの味噌汁を買うと家に戻った。
酸っぱいような匂いのする干からびたCubensisは例によってふわふわと味噌汁の上に浮いた。
「今回の・・・なんかでかいな」
「うーんと言うか・・・臭い?」
「噛まなくちゃ駄目か?」
良薬口に苦し、あんなに面白いもの見えるのなら幾らでも食うさ。
2.新しい終わりへ
食ってから部屋に戻り新居昭乃のCDを入れる。
リピートの設定にし、無限に回り続けるようにしておく。
これさえあればバットトリップなどは考えられない。
無条件に優しい歌が部屋に流れる。
いつも通り俺は居心地のいい安楽椅子に座った。
腐ったようなデザインの物が多い中で、これはとてもいい。
死んだ婆さんありがとう。
奴は部屋の真ん中に、彼は部屋の隅に陣取った。
そして体温調節がおかしくなるのと、視覚の色調が変化するの、そして身体の震えなどを待った。
三十分を過ぎると白熱球に照らされた部屋が、オレンジ色に輝き始める。
天井の木目が生きているかのように呼吸する。
古い硝子の傘に包まれた白熱球はまたあの白く眩しい光り方を始めてくれた。
世界が優しく響く。
俺と奴が効き始めた頃、彼は平気そうに部屋の隅に座っていた。
どうやらまだ効果が現れていないらしい。
酒、煙草、ギャンブルの人なのでもしかしたら効きが悪いのかもしれない。
しきりに身体の怠さを訴えると、部屋の隅の角にちょこんと座った。
しかしここからここまでは俺空間、とか言っているのを聞くともう既に効いているのかもしれない。
普段もこんな感じのような気がするので、分からない。
音が透き通り始め、目を瞑ると青い幾何模様がうっすらと無限のサイクルを描き始めた。
だけれども前回より強力とは言えない。
きっと抵抗のついてしまうものなのだろう。
ふと目を開けると奴はまだ漫画を読んでいた。
今回はどうやら目を開けたまま試してみるらしい。
カラーで描かれた雪の景色の色が美しく見えた。
何時も見える色よりも細やかなところまでそのグラデーションの差異を感じられる。
目を移すと冬目景のイラストが生々しく鮮やかに見える。
俺はそのうちにまた目を瞑り、光のサイケデリックな世界に行こうとした。
けれどもやはり前回ほど強くは見えない。
暫くして目を開けると彼がじっとしていた。
まるで新しい生き物のように見えた。
「効かない?」と聞くと「うーん、身体が怠い」と答えた。
後で聞いた話によると、部屋の角が非常に気持ち良く、一体どうやったらここにぴったり入れるかどうかを真剣に考えていたらしい。
わからないが、気持ちは何となくわかる。
そんなもんだ。
奴は相変わらず気持ち良さそうに漫画を読んでいた。
エクセルサーガを読んでいるようで、たまに笑いを堪えているようだった。
それも絶対にバットトリップしないだろう。
俺はたまに羊の詩など読み、気持ち良くなっていた。
気持ち良い倦怠感の中を泳いでいるのは非常に楽だ。
オレンジ色の光が優しい。
俺はまたべらべら喋りたかったが、前回懲りてたので今回はなるべく喋りまくらないようにした。
十分コントロールできる。
彼が音が大きく聞こえてきて五月蝿い様だと言ったので、ボリュームを下げてやる。
思考が固定されやすいので、一回不快に感じたものはなかなか変えられない。
変わるときは一瞬で変えられるのだが、気になるとどうしようもない。
だた俺達の時とは違い、かなり彼は平常そうだった。
たぶん開始から二時間が過ぎたころ、奴は自分の部屋に引っ込んだ。
その後か前か丁度かにもう一人が帰ってきた。
皆で、あー、うー、あーと日本語で簡単に説明してやって、Cubensisを食わせた。
この後十二時を過ぎるまで彼は、自分の真っ暗な部屋の中から出てくることはなかった。
彼と俺で興味本位に様子を窺うと、もう一人は毛布に包まれて死んだ魚のように突っ伏していたが、声を掛けると笑うので問題なさそうだった。
というより実は、もう一人がどうなってても彼と俺はどうでも良かったのである。
たぶん目の前で知らない人が殺されても自分に危害が加えられなければ、何にもしないであろう。
同じ位置から動くのが恐ろしく面倒くさかった。
同じ姿勢でいるのが恐ろしく気持ち良かったからだ。
いつの間にか俺は始め彼のいた隅の方へ、彼は俺の座っていた安楽椅子に座って二人ともじっとしていた。
時たま会話をしたが、上手く噛み合っていて噛み合ってなかった。
言葉を言い終わる前に次々と思考が生まれ紡がれていく。
例えば「今日は歯を磨いた」と言うとしよう。
それが「今日はチャンネル6だよな」となる。
何故かというと「今日は(歯を磨いた。今聞こえる物音は何だろう。ああ隣のテレビの音だな。チャンネルはたぶん6だろう)チャンネル6だよな」という有り様だ。
あまり上手い説明ではないが、もっと滑らかに一応の論理立てが語間で完成して思考が組み上がる。
話している途中にそうなのだから、何か怪しい会話になる。
だから会話は上手くいかないが、これも楽しいのである。
二人でオレンジ色の電球を見ながら懐古の様なものを感じた。
彼はまるで60年代のようだと言い。
俺は明治の終わりのようだと感じた。
白熱灯の硝子の笹のような模様を見ていると、大きな日本家屋の玄関と黒いメイド服を着た女の人が見えたような気がした。
とても懐かしい、懐かしい記憶のようだ。
部屋が世界という空間から切り離されて、別なところにいるような気がした。
もしこの外が宇宙です、と言われて「ああ、そう」と言っただろう。
あとは二人で煙草を吸い続け、深い水の流れのようなゆっくりとした時間に身を任せていた。
そのうち彼がTVをつけて、紅白歌合戦を観た。
俺にはその音はあまりにも不躾で残酷なものに聞こえたが、不快感先を変更すると没入した。
くだらないことが面白く、声を立てて笑った。
会話の途中に目がとらえられると、そのTVの事以外殆ど何も考えられなかった。
音は大きそうだったが、はっきり言ってCbensisでその音が大きく聞こえるのか、それとも本当に音が大きいのかはわからなかった。
一度もう一人が部屋から出てきて、なんかが見えるとかなんとか話していたが、全部忘れた。
適当に話していたが、良く思い出せない。
ただ忘れた。
たまにトイレに行くとトイレは恐ろしく気持ち良かった。
明るさとその限られた空間が、他から切り離されたようで気持ち良かった。
何処でションベンが終わっているのかがよくわからなかったが、全然問題無しだ。
奴の様子を見るとジャングルファイティーグのジャケットを着て、一人で殺し屋のような面になっていた。
煙草を俺達に渡すと、一寸話してからにやりと笑ってまた部屋に戻っていった。
会話の様子が可笑しいので、なんでか分からないが俺と彼は試しに桃太郎の話を始めてみた。
全然上手くいかない。
「むかしむかし、お爺さんとお婆さんがいたんだっけな?」
「いたいた」
「お爺さんは・・・なんだっけ?ああ、そうそう川へ洗濯に」
「あー考えられないぞ、全然違うけどまあいいか」
「お婆さんは山へ芝刈りに」
などとかなり様子のおかしい桃太郎を話し合って大笑いした。
というより俺達の様子のほうがきっとおかしかったのだろう。
「犬なんてどこにもいねぇよ、どこにいるんだ?」
「おいおい鬼ったって何処にいるんだよ、独りぼっちだよ」
「鬼別に悪い子としてなさそうだなぁ、宝なんか見あたら無いし」
一九九八年の最後の瞬間は、たしかこんな馬鹿話をしていた。
3.2次元のサディスト達
間もなくして俺はまた奴の様子を見に行った。
奴は暗い部屋の中で横たわってエヴァンゲリオンの11巻か何かを見ていた。
「面白いか?」
「スゲー面白い、コマ落ちて全部見えるぜ」
俺も横になる。
電気カーペットで内蔵が暖められて気持ちがいい。
本当だ高速で流れていく1カット1カットがはっきり見える。
いやそんな気がするだけかもしれない。
丁度アスカがなんだか精神攻撃を受けて悲鳴を上げたりしてるやつだった。
「どう?」
「ああ?・・・なんか目茶苦茶にしてぇ」
奴が呻く。
なんとなくCubensisは性欲が無くなるから、きっとこの目茶苦茶はそういう意味とは違うのだろう。
というより何となく俺にも分かっていた。
画面ではアスカがトラウマみたいなのをほじくり返されたりして、泣き叫んでたりする。
書いていいだろうか。
書こう。
赤いエナメルみたいなスーツを着た少女が唸る様は、気持ちがいい。
腹かっさばいて、内蔵引きずり出したい。
絶望に打ち震えさせたい。
握りつぶしてやりたい。
手のひらに載せて、こいつの人生を弄びたい。
人格を否定されて、拒否されて苦痛に嘖まれる少女の姿は快楽だ。
六歳ぐらいのシーンなのだろうか。
葬式で喪服に身を包んだ少女が泣いている、強がっている。
騙して希望を持たせて、裏切って粉々にしてやりたい。
悲しいけど、大笑いだ。
まさに歓喜だろう。
脳内に快楽部室が広がる。
きっと俺達はマゾヒストのサディストなのだろう。
心の苦痛が気持ちいいのだ。
ミサトさんが泣いている。
悲しみを堪えるようきつく身体を押さえている。
笑いが止まらん。
本当に人の苦しむ姿は、何と気持ちがいいのだろう。
俺達は二回ばかり同じ巻を見続けた。
見終わった後、ブルーバックのスクリーンが部屋に反射して青い光の中で、どうして俺達はこうなんだろうと少し話した。
たぶん2次元だからいいんじゃないかなぁと俺は思った。
リアルソースの人間じゃあ、こんなふうには喜べないだろう。
リアルだから。
暫く人を騙すことと悪巧みして金を儲ける方法などをCubensis漬けになってる頭で話し合った後、内蔵が溶け落ちるような暖かさに身を任せて暫く惚けていた。
血も舐めていないのに、鉄の味がするような気がした。
内臓を喰らってやりたい。
弱いものを嘖むのが快楽のどうしようもない生き物だ。
ははは、絶望的に脳が気持ちが良い。
4.内臓の流れ出す音とアレルギー的な音楽
彼はまた安楽椅子に座って煙草を吸っていた。
何もしない、何かを考えているようでもあり、何も考えていないようでもあった。
ただとても楽そうに見えた。
青い殺伐とした空間に見える仕事のことと世界のこと。
俺の部屋に引っ越してこようという話。
下北沢の古道具屋のこと。
静寂に身を任せて、井戸の深淵に溜る泥のように過ごした。
何もしないで椅子に座って時間が過ぎることを楽しんだ。
白熱球の明かりが現実の時間の瞬間に懐かしさを与えてくれる。
心地よい過去の連続の中で生きていられる。
彼がそこに座っていることが、昔から当然のように見える。
身体の動かさない部分などは、まるで置物のようだった。
俺は物になりたいと思った。
動的に生きていくのは辛いことが多すぎる。
この部屋にある物たちは、もしかしたら生きているのが辛くなって物になった人達かも知れない。
この絵も、額も、煉瓦も、電灯も、スピーカーも、全て。
動き回るものの中に身を投じて、同じように生きているのは辛い。
物になって、固定物になってありたい。
同じところだけを見て、身体は動くことはない。
ただ、そこにじっとしているだけだ。
それはとても楽そうだ。
音楽だけ聞こえて、同じ視界にあるものだけを見つめて朽ち果てる。
動くものを止めて静かになりたい。
ここにある物たちは、世界に飽き果ててCubensisでも食って、同じ姿勢で同じ気持ちで何時までも何時までも時を過ごしたものの残りなのかも知れない。
そう思うと、動かなかったものたちが幸福そうに見える。
俺も俺置物とかになりたい。
何故静物が動物になっていったのかが分からない。
動的なものにも感動はあるが、この静かな世界には安らぎがある。
何も感ぜずただ時間の平行線に存在していたほうが、辛くないのではないかと思う。
進化は悪いことではないかも知れないが、アメーバーや植物がどうして人のように雑然と思考する生き物にならなかったのは、ここでいいからと思ったからかも知れない。
どうでもいいことだ。
俺達は生き物として生まれてしまったし、死ぬことしかその静寂は味わえないが、生きている。
Cubensisが効いている間は世界がシンプルに単純に写る。
こんなにもシンプルな世界の中で生きていたいのに、外は複雑すぎる。
生きていることが辛い。
だが、生きていることがこんなに楽だ。
とても楽で何も思い出せない。
身体から思いでとか連続的な秩序だった思考とか、全て流れ出ていくようだった。
光を仰ぎ見て、身体を伸ばすと記憶という腐った内臓が、地に落ちていく音が聞こえてきそうだ。
全部俺の何もかも全てこの光の中に消えてしまえばいいのに。
消滅してしまえ。
いつまでそんなことをしていたのか気がつかなかったが、また奴の方の様子を見に行くと、奴は何もしないでTVの光が反射する世界で暗闇を見つめ続けていた。
奴をそのままにして部屋に戻る途中、幻覚アレルギーのCDを見つけた。
死んだような色の外国人の女の人の口の回りにマジックで無作為に赤い線が引いてあるジャケット。
Cubensisも切れ始めたので調子に乗って、かけてみた。
流れ出る破壊的なギターの音が心地よい。
大人しく俺は目を瞑って、幻覚の世界に入った。
灰色の肉の不具者の列。
黒い革で拘束された丸坊主の女。
まさか俺の中にこんなものが見えるなんて思わなかった。
脳に感謝。
何処までも視界の水平線の向こうまでそんな異形の生きもの達が蠢いていた。
バッドトリップか?
構いはしない。
血と肉を弾く。
膨れ上がった妄想の俺が、一つかみで四、五六人を握りつぶす。
骨の折れる音まで聞こえてきそうだ。
糞をひねり出す人の群れの中を両腕に牙を持った獣のように疾走して皆殺しにしていく。
内臓があふれて、灰色の世界が赤く染まる。
ほんの一部分、絶望的な量の生きもの達を、静かな肉の山に変えていく。
どこまでも、どこまでも、水銀だけが俺の恋人。
殺せ。
暴力と吐き気の様な胸のむかつきが気持ちいい。
若い女の尻が、しわくちゃの婆さんになる。
こぶしをハンマーのように握って、叩き潰す。
笑う。
あまりの可笑しさに笑った。
殺して、殺して、殺し尽くす果てに何があるのか。
この俺の腐った世界に何があるのか。
どうしようもない人間、俺の世界だ。
地獄の中に愛おしいものが、両腕を固定された少女のような天使が赤い肉の檻の中、眼下で吊るされている。
地獄の中の愛おしいものを守ろうと思う。
この灰色の世界の中であれはあまりにも白い。
次々と人間の群れを殺し、引き裂きがながらたまに白を垣間見る。
奇麗だった。
だから両手で叩き割った。
胸元から、一気に引き裂いて内臓を引きずり出して殺した。
そして喰らった。
やってしまった。
救いの無い世界。
白が赤く染まる。
血まみれのそれを抱えて、何処までも走り続けた。
笑う、別に辛いから笑ったりしたのではなく殺した喜びに打ち震えて笑った。
血まみれの無限荒野の中は力があれば、辛いことも快感だ。
後悔が快楽につながる。
無窮の暗闇を見つけると、白と赤のコントラストが鮮やかな少女を下ろした。
救いはない。
腹を引き裂かれて、縫い付けられたように開くことのない目は死んでいる。
俺の快楽のため。
俺の幸福のため。
辛かったが、半ば喜びながら天使の羽を少しずつ毟って俺のために暗闇の下の方へ、投げ込んでいった。
あの暗い闇の底の何処かにこの白い羽が積もっていたら、何とかなるのかも知れない。
羽を毟るたびに死体の顔が苦しげに歪む。
辛いが、気持ちがいい。
何時までも何時までもそんなことを続けていた。
どうしようもないことだ。
快楽だからな。
音楽は終わっていた。
5.コンビニエンスストアはまるで何かの映画のように明るかった。
目を開いてまたもう一人の様子を窺いに行くと、もう意識はかなりはっきりしているようだった。
どうも一ヒット分の半分ぐらいしか食わなかったようだ。
酒・煙草をやらないもう一人には十分すぎるほど効いたらしい、初物は良く効くのかも知れない。
緑色の波のように続く永遠のサイクルを見ていたらしい。
今まで何を思い悩んでいたんだろうとか言っていた。
Sony製のモニターや自作PCをたたき壊せば何か手に入るのか知れないと思ったりしたらしい。
たたき壊してみてくれれば良かったのに。
他には回りの人達に感謝とか言っていた。
まあいいものだと分かってくれたことは嬉しい。
ただ、やはりこればっかりはやってみないことにはわからいだろう。
法適用されないことを願う。
しかも食ったこともないやつに「悪いものだから違法」みたいなのはごめんだ。
死ね。
合法にしとけ。
脱線したな話を戻そう。
その後、彼が腹減ったと言うのでコンビニに出かけることにしてみた。
ここでも一悶着も二悶着もあったのだが、そうすると延々と書き続けていなくてはならないので適当に流す。
・もう一人、進化する生き物のように少しずつ立ち上がる。
・ベビースター食いたくなる云々。
・■■■はいい進化してるなぁ、俺も■■■になりたい。
・■■■育てて、それをぼくぼく食って生きていけないだろうか。
・できれば、もう一人とかを働かせて、俺らだけ毎日ぼーっとして生きてくの。
・日本はこれから■■■だけ作って、こればっか食ってる世界中の中の天国にしよう。
など。
この後もう一人を残して、俺と彼は外に出た。
暗闇と冬の肺に突き刺さるような冷たい空気が気持ちがいい。
月の光がまるでTVで見る太陽の光のように十六本の帯を残して美しかった。
目の悪い俺でも鮮やかに星が見える。
何事も新鮮に見えるようだが、全て本当は何時も見えているものなんだろう。
ただ散漫になって気がつかないだけなのだ。
もっと単純な思考形成で生きたい。
俺達は近くのローソンまで行くと、お互いの外見的不自然が無いかチェックして中に入った。
涙よし、鼻水よし、お漏らしよし、様子・・・若干の問題、よし。
店内は随分明るく見えた。
この中での俺達、特に俺の様子はかなり可笑しかったが、流石に誰も近づいてはこなかった。
Cubensisはよく効いていた。
はっきり言ってあんまり物は考えられないというか、さっきまで何を欲しかったのかとかが、新しい刺激の所為で欲望が放漫になっていた。
とりあえず、ベビースター3つ、ココア2つ、モナカ2つ、チョコレートのアイス2つ、このぐらい買ったかと思う。
かなり様子がおかしいパッパラパーの俺を連れて彼が買った。
ちなみにコンビニに入るまで俺達は金を持っているかどうか気がつかなかった。
ココアを飲むと口の中に甘さが異常に残った。
涙とか鼻水とか飲み物とかを絶えずこぼしているような気がした。
楽だ。
コンビニですら楽しく感じられる。
6.祭りの後
家に帰ってくるころには大分Cubensisの効果も切れかけているようであった。
書いていて今思ったが、コンビニに行くのはもしかしたら幻覚アレルギーの前だったかも知れない。
でもそれは、時系列が混乱していたのではなくて、ただ忘れてしまっただけである。
前回のような混乱も何もなく、割と効き方は甘かった。
その後皆でどんな感じになってたかなどを話して、男達の挽歌という深夜の映画を見た。
奴は一番先に眠りについて-それか一人きりになって-次いで俺がベットに潜り込んだ。
眠りは浅く、身体は怠かった。
ベットの下ではまだ彼ともう一人が怠そうに映画を見ていた。
朝の五時頃に彼は帰り、朝か夕方の七時頃に会社を辞めてすがすがしくなった友人がやってきた様な気がする。
今回のセッションは幻覚の効きが弱かったと思う。
前回のような物凄い効き方はもう無いのであろう。
初物はやはり違うのかもしれない。
段々効かなくなるのはいやだなぁと思うが、大丈夫あと上に二段ある。
残り少ない快楽を貪り食おうと思う。
Cubensisの習慣性ではなく、俺の人間性の問題だろう。
この後、一日ゆっくり休んだ後に連続二日間にわたって二発軽めに食った。
それについてはまた次に書くとしよう。
しかし、一九九九年という年はロゴがいい。
二〇〇〇年なんぞも楽しそうだが、一九九九年はいい。
理由なんぞないが一九九二年の次にきっと好きだ。